▶ゲートの鍵は、フットパスを歩くために必要な専用のルートマップと共に借りることができます。
Things to Do
根室でしかできないDEEPなこと
地元酪農家が拓いた道。
別当賀フットパスで感じる、
根室の風土。
#フットパス #根室の魅力
北海道の各地で出会う広大な景色。根室のそれは、ひと味違うように思います。植生のせいか、海が近いことによる霧のせいか。静かで、簡単には立ち入ることのできない自然。そんな印象を抱いていました。そんな根室の自然の中を歩けるのが「根室フットパス」。そのうち厚床から別当賀に渡る「厚床パス」「初田牛パス」「別当賀パス」は、酪農家が牧場の敷地内に作ったというちょっとユニークなフットパスです。今回は別当賀パスを歩き、フットパスに込められた思いと共に、根室の自然を見つめます。
※記事の内容は2023年時点の情報になります
Contentコンテンツ
林と丘を越え、目指すは海岸線。根室の自然の中をひたすら歩く。
別当賀パスは約5kmのアップダウンがあるコース。根室フットパスの中でも特に広大な自然が楽しめるルートです。元々放牧地として利用されていたエリアは、現在では野鳥の生息地の保全を目的とした、公益財団法人日本野鳥の会における野鳥保護区となっています。
別当賀駅を出発し、裏の道を行くと見えてくる緑の立て看板。ここからいよいよ、根室の大自然へと向かっていきます。始めに歩くのは見渡す限り草原が広がる道。しばらく進むと、今度は国有林の中へと入っていきます。
林を抜けると現れるのは鍵付きのゲート。この先は野鳥保護区です。冒険が始まるようなわくわくした気持ちを抱きながら、扉を開けて先へと進みます。
ここからは丘が連なり緩やかな起伏がある道をひたすら歩いていきます。聞こえてくるのは、風が草木を揺らす音とかすかな鳥の鳴き声だけ。整備された農道を歩いているとはいえ、自分は今、動植物との境界線のない自然の中にいる。そんなことを実感しながら、目指すのは丘の向こう側の景色です。
▶道の上にはエゾシカの足跡も。
▶4~10月にかけて季節ごとに咲く花々も、別当賀パスの魅力の一つです。写真はハマナスの花。
ゲートを越え、草原を抜けると視界が開けました。遮るものは何もなく、ただ広がる草原と海。これほど広々とした景色には出会ったことがありません。マップを片手にさらに歩き、このフットパスの最奥にある海岸へ。
やっとたどり着いた海岸線。端まで歩くと地層が現れました。風と波の浸食によって形成されたこの断面。細かい凹凸、さらさらと滑らかな表面、茶色とグレーのグラデーション。自然が作り出した美しさに圧倒され、引きこまれてしまいました。
始めは歩ききれるか不安だったフットパス。気がつけば、ひたすら歩いていくことを疲れも感じずに楽しんでいる自分がいました。
フットパスに込められた、酪農家たちのこの地域への思い
このフットパスを作ったのは、実は根室の酪農家たち。厚床と別当賀の2つの地域と5軒の酪農家の頭文字をとって「AB-MOBIT(エービーモビット)」と名付けられた酪農家グループです。そのメンバーのひとりである伊藤泰通さんが、フットパスについて教えてくれました。
▶泰通さんは明郷 伊藤☆牧場の社長。フットパスづくりをきっかけにカフェやレストランの経営も始め、幅広く酪農を伝えています。
AB-MOBITが誕生したのは2000年(平成12年)頃のこと。当時BSEをはじめ食品の生産過程における問題が次々と起こり、畜産や酪農への信頼が揺らいでいました。そんな中、酪農への理解を深めようと農協青年部のメンバーが集まったのです。
ただ牛乳を飲んでもらうのではなく、酪農を取り巻く自然環境や地域の風土も伝えたい。見つめ直した根室酪農の良さ。それは、牛が食べる牧草を100%自給できることでした。広大な草地が確保できるこの地域だからこそ可能な酪農です。その根室らしさを象徴する牧草地を直接見てもらおうと、農道を活かした牧場の中の散歩道を作ることに。「酪農という産業がないとこういう景観も維持できないということを、理解してもらいたかった」という言葉に、先ほど心を動かされた雄大な景色を思い浮かべながら深く頷きました。
▶別当賀フットパスで見られるコンクリートとレンガのサイロは昭和時代に使われていたもの。ここでかつて酪農が営まれていたことを教えてくれます。
フットパスという言葉自体、まだ馴染みのなかった頃。自分の足で歩きながら根室の風土を感じてもらいたいというAB-MOBITの取組みは、専門家をはじめさまざまな人の関心を集めました。ワークショップを通して多くの人が関わり、構想から3年かけて出来上がったのが厚床フットパス。さらにその3年後には別当賀パス、さらに初田牛パスと、5つの牧場を結ぶ道を作り上げていきました。
一斉に草刈りをしたり、泊まり込んで整備したり。広いエリアを整えていく過程には、大変なこともあったのでしょう。けれどそれらのエピソードを楽しそうに話す泰通さんの様子からは、フットパスを通して地域の魅力を伝え続けていることへの誇りが感じられました。
別当賀パスを歩いて感じた、この土地の風土
フットパスへの出発前。見どころはどこですか?と聞くと、泰通さんの答は「行ったらわかる」。せっかくのフットパス散策で何か見落としてしまわないか心配でしたが、実際に歩いてみると、泰通さんの言葉の意味がわかりました。
普段見かけない草花を見つけたり、素敵な景色に出会ったりする度に、自然の中を歩く楽しさが増していったのです。誰かに教えてもらったものを探すのではなく、自分の感性で気づくことで、より深く根室の自然を味わえました。そしてふと自分が歩いてきた道が放牧地だったと思い起こした時、自然環境と酪農産業のつながりが見え、この地域に根づく風土を感じることができたように思います。
雄大な自然と暮らしを営む人々の思いがかけ合わさって、根室の風土が出来上がる。自分の足で根室の自然を歩くことで、そんな実感を得られました。
Information
インフォメーション
ちいさな雑貨屋Étable & 酪農喫茶GrassyHill
明郷伊藤☆牧場の敷地内にあるカフェ。フットパスに必要なルートマップはここで入手できます。クマよけスプレーの貸出、熊鈴の販売も行っています。
北海道根室市明郷101番地21
電話番号 0153-26-2798
営業時間 10:00~17:00
URL https://etablegrassyhill.jimdofree.com/
※根室フットパスを歩くには専用のルートマップが必要です。以下の施設で購入することができます。
明郷伊藤☆牧場、ヒシサン厚床SS、道の駅スワン44ねむろ、根室市観光インフォメーションセンター、小さな白いカフェ
※別当賀パスを歩くには、さらにゲートのカギが必要です。こちらは明郷伊藤☆牧場のみでの対応となります。
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